ルーツ


 私は進学や就職などの理由から、自分の住む場所を転々としてきて、現在東京に住んでいる。
そして、生まれてからずっと同じ場所に住んでいる人が、自然災害などの理由で住めなくなってもなお、その土地に執着することを不思議に思うと同時に、そのくらい自分のいる場所を愛せることを羨ましくも思っていた。
 以前NHKで、地球の温暖化によって海面が上昇し、世界で一番最初に沈む村について取りあげていた。波打ち際に寝床を構えるおじいさんは、「例え寝ている間に波が押し寄せてくる危険があっても、自分はこの家で眠る。なぜなら自分の家はここだから。」と言っていた。私は、早く少しでも安全な場所に引っ越せばいいのに!なんでそこまで!と画面に向かって指を差しながら語りかけていた。しかも涙を流しながら。。
地震で水没してしまったため、新潟県山古志村の民家が、まだ水に浸かっている。それを家に住んでいた家族が見ている。それをテレビ画面を通じて私が見る。つらい…。大切な我が家が溺れているのに、助けられずに、ただただ見ているだけ。

山古志村の村民は長岡市の住民になったけども、山古志村に帰りたいらしい。いつか見た、アジアのどこかの国の、世界で最初に沈む村ののおじいちゃんを思い出した。



 故郷にあんまり愛着は無いと思っていたけど、もしも実家のある町が水没してなくなってしまったら、体のどこかにぽっかり穴が開いちゃうかもなあ。それは寂しい。やっぱり、幼い頃から思春期までを過ごしたその場所は、切っても切り離せない私のルーツだものね。