長い日記『合言葉は「イモ屋のロッキー」』


 あれは一ヵ月も前のこと、友人と「千鳥が淵」に遅めのお花見に行った。もう葉っぱがでていて花は見頃をとうに過ぎた感じだったが、千鳥が淵の雰囲気はまだお花見ムードで屋台が出ていて散歩する客も多かった。 桜は散ってもまだ肌寒い。やきいも屋を2軒見過ごした後、友人が言った。
「やきいも食べたい」
やきいも!最近めっきり食していない。買うの恥ずかしいこんな真っ昼間外で食べるのも恥ずかしいけど、食べてもいい。
「いいよ、じゃあ半分こしようよ。」
私たちは焼き芋を食べる事にした。

 ほくほくほく
 もぐもぐもぐ
 あふおい

なんだか懐かしいと思いながら焼き芋をほおばっている時、イモ屋のおじさんが話しかけてきた。
「クイズに正解したら、焼き芋もう一本あげるよ」
芋は別に一本でいいんだけど、これは受けて立つしかない。

クイズは3問。
『羽がないのに空を飛び、足がないのに車に乗り、口がないのに語りかけてくるものなーんだ。ヒント:日常生活にあるものです』

なぞなぞか。。
イムリミットは、芋を食べ終わるまで。 あ、わかんないや。もういいや、と早々に諦めて芋を食べ終わる。ふと友達を見ると、たいそう真剣に悩んでいる。答えがわかるまで芋を食べ終えない様子。。。ここはひとつ私もがんばってみよう…
…数分が過ぎ…わかった!!!!もしかして…!

「正解。」
正解しちゃった。

「3問正解すると、永久会員になれるよ。」
永久会員は、一生、毎回イモをタダでもらえるらしい。
「夏はアイスクリーム屋になるから、アイスクリームをあげるよ」
アイスクリーム!!
「チャレンジします。」

2問目、数学みたいなクイズ。もういい。数学きらい。そう思っていたら友達が解いた。やるーぅ!
3問目、ここまでくるとなにがなんでも永久会員になりたい。がんばった。正解。気が付いたら日が沈んでいた。

「5年振りの会員だ。『資生堂花椿』以来だ。」
「??」
「君たちは『千鳥の葉桜』ね。ぼくは『イモ屋のロッキー』ってんだ。合言葉を言ってくれたら、引き換えにイモとかアイスをあげるシステムだから、忘れないでね。」

こうして私たちはイモ屋の永久会員になった。しまった。恥ずかしい。なんでよりによって、イモなのか。まあいいや、夏には上野公園にいるっていうし、アイスをもらいに行こう。

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 この先、ロッキーには一生逢わないかもしれないし、何度も見つけるかもしれない。でもロッキーって名前のおじさん(日本人)がいて、いつか偶然出逢ったら芋とかアイスをくれ、「お元気でしたか?」なんて言いながら談笑する。そんな可能性を秘めながら生きていくっていうのがいいじゃないか。