内藤礼-What Kind of Place was the Earth?-「地上はどんなところだったか」


 いいものを見た日は気分がいい。だからこうしてここに書きたいと思うんだけど。
『小さな泥の船』『淡い淡い柔らかなドローイング』『(無数の針の小さな穴があいた)白い紙のプレート』
どれも形態は違えども、『伝わってくるもの』は共通している。繊細で柔らかくて、温かい。

 世界は自分ではどうしようもできないところでどんどん動いて行き、日常生活では色んなものや思いが交錯し、自分では気が付かないうちに、都市ではちょっとつっぱって生きているのかもしれない。内藤礼さんの作品を見ていると、自然や光や美しいものが、ぽろぽろと溢れてきて、忘れてはいないはずの何かを思い出して泣きそうになった。いや、ちょっとだけ泣いた。大きな温かいものに包まれた気がした。


  

「つくられたものを放ち 与えられたものを返す」


泥の船には自分の魂を乗せて、放つ。土はまた、土へと還る。



「なににもならなくていいよ おいで」


薄い紙にぎりぎり読めるくらいの小さな小さな文字で書かれている。こんなにも心に響くものか。